旅立ち先の決まったあなたを梱包する時。
季節の花が描いてある和紙の便箋にあふれる感謝をしたため、宛名を書き、行くべき方の元へ旅立つあなたを音叉で清め、台紙に固定し封をするその前にそっと、挨拶をする。
「いってらっしゃい。またどこかで逢うかもね」
石を選び、
紐を結び、
わたしがあなたを創り上げたその瞬間、
物語りの序章がオワル。
どこか遥か地球の地中に静かに息づいていたあなたを誰かが見つけ、初めて太陽の光を浴びたあなたは幾人もの手を渡り、磨かれたり、遠い距離を移動したり、愛でられたり、
そうしてわたしの掌の上までやって来たね。
物語りの序章は、
あなたが暗い暗い地で初めての呼吸をしたその瞬間からハジマル。
そして 序章を終えた物語りの本章は、
イマ ココカラ。
あなたを迎えた誰かと暮らしを共にする中で、あなたはたくさんの想いや感情や体験をその誰かとシェアしてゆく。
あなたは 誰かの“生きる”の目撃者となり、
その肌から伝わる情報を汲み取り、その誰かのサポートとして役割を全うしてゆく。
時にあなたは“御守り”と呼ばれ 大切に大切に愛でられ、
役割を全うした時には、
また違う誰かの元へ旅したり
はたまた 引き出しの中で休憩をしたり
紐が解かれ ひと粒の石に戻ったり。
わたしは、物語りを届けたい。
そのお迎えしてくれた誰かにも、
あなた自身にも。
だって、ドラマティックで仕方ないのです。
一期一会の惹かれ合った奇跡を経て、
生きるを共にするなんて。
物語りは、共に在ることでウマレル。
たった一瞬だったとしても、
記憶は刻まれる。
同梱した手紙の文末はいつも、同じ言葉。
「よきパートナーとなりますよう」
わたしは、誰かに届けたい物語りがあるのです。
誰かとあなたの、よき物語りを。

《今日の一枚》
アクセサリーを台紙に飾り、梱包を進める前に挨拶をする。
誰かの手元まで、ぬくもりと共に届ける作業。